Heaps Magazine: True Professionals

By Mary Chung | Heaps Magazine

アメリカのビジネス界で成功する──頭が切れ、仕事のノウハウを知り尽くした人間たちの中で生き残るということだ。そこに、「報道陣」として足を踏み入れた先に広がっていた世界とは? かつては未熟なリポーターとして「痛い目」だらけの日々を越え現在、一流ジャーナリストとして活躍するMary Chung(メアリー•チャン)。今だから語れ る、彼女が見てきたビジネス界のお話。    SCENE:01「危ないスクープ取材」  ジャーナリストとして、経済情報紙『Financial Times』などを含めいくつかの報道機関で数年働いていたころ、ウォールストリートの大物、いわば“権 力者”たちを取材することがたびたびあった。“女の若手”だったからか、CEO への取材のアポを取るのにそんなに苦労をしなかった。    まだリポーターとして働いていた頃、私は若くてやたら野心があり、少し生意気で、同時に未経験ゆえの“純粋さ”があった。ある日、私はひょんな巡り合わせでビッグチャンスをつかんだ。誰もが知る、当時世間を騒がせてい た“あの会社”の代表の取材に漕ぎ着けたのだ。「このニュースを一番先に報道できたら」と思っていたので、逃す手はない。この世のすべてのリポーター たちは“スクープ”を血眼で探している。自分たちがいち早くニュースを世間 に伝えるために、どの報道陣も必死なのだ。重役であればあるほど、取材には好ましい。情報源の“説得性”が増せば増すほどいい。代表の証言を取れるなら、もう「負けなし」だ。     その代表は、私にホテルでの会合を提案し、「リッツホテル」を指定した。 私はそれを承諾。ホテルのロビーか、もしくはラウンジで会うのだと思ったからだ。しかし実際ホテルについてみると、彼は「ルームナンバー」を教えて きた。「ホテルの部屋で会うなんて、おかしくないか」と疑ったが、下手に意見して「取材の話はなかったということで」などとなったら困る。どうしてもその取材を遂行したかった。かなり怪しいが、とりあえず信じてみることにした。「なんたって相手は大企業の代表なのだ」、と。若く、素朴で、現場知らずだった。 この後、「やっぱり自分の直感には従うべきだ」と学ぶことになる。部屋のドアを開けた彼は、白いふわふわのバスローブに身を包んでいた。そして、わざとらしくあの部分がはだけ、ちらりとアソコが覗いていた。     走って逃げ出すべきだったが、私は固まってしまい、ぐいっと引っ張られて 部屋に入ってしまった。そのままソファに座らせられた。彼の方を見まいと努め、バッグから取材ノートを取り出し、真剣な口調ですぐさま質問をはじめた。というのも、彼はもうグラスに酒を注ぎはじめていたからだ。彼は私にも酒をすすめてきたが断った。「取材のため、取材のため」と自分を落ち着かせ ようと、何度も自分に言い聞かせた。  彼はくすりと笑い、時間内であれば私のすべての質問にたいして答えると言った。「もっとリラックスして」と。そして、アソコをバスローブからむき出し にして、私に近づいてくる。グラスの酒をすすりながらゆっくり歩き、私の真ん前で立ち止まった。私の顔の真ん前にアソコがある状態だ。  私はキレた。「現実に自分の身に本当に起こっているんだ」、と思った。私は心の中で怒り狂っていたが、その怒りを押さえつけ、自分を落ち着けた。一 つ咳払いをして、立ち上がって彼を押しのける。「取材は以上です」と、言った。「それ」と、直立しているアソコを見ながら言ってやった。「全然そそらないですし」  どうしてあの部屋を出るとき、あんなにも落ち着いて、毅然とした態度をと れたのかはわからない。「ちょっと待って!取材受けるから!」と彼は叫んだ。私は振り向かなかった。もうそれ以上、彼の顔もアソコも見たくなかったのだ。   私がこの「取材事件」から学んだ3つのことは、今でも私のキャリアと日常生活でも役立っている。    1. ホテルでの会合はしない。ホテルになってしまう場合は、 ロビーか、バーやレストランにすべき。 2. どんな状況でも取り乱さない。落ち着いて、毅然とした態度でいること。 3. いつでも、自分の直感に従う。    未熟さゆえの「判断」で痛い目をしたこの事件。アメリカのビジネスマンを相手には、「考えすぎかな」など、緩い思考でいては馬鹿を見るようだ。「一つの振る舞い」、「一つの判断」が、命取りとなるこの世界。道ばたで歩いているだけで詐欺にあう可能性のあるアメリカであるからには、ビジネス界でもとことん相手を疑ってかかるのが得策だろう。 

アメリカのビジネス界で成功する──頭が切れ、仕事のノウハウを知り尽くした人間たちの中で生き残るということだ。そこに、「報道陣」として足を踏み入れた先に広がっていた世界とは? かつては未熟なリポーターとして「痛い目」だらけの日々を越え現在、一流ジャーナリストとして活躍するMary Chung(メアリー•チャン)。今だから語れ る、彼女が見てきたビジネス界のお話。 

 

SCENE:01「危ないスクープ取材」

 ジャーナリストとして、経済情報紙『Financial Times』などを含めいくつかの報道機関で数年働いていたころ、ウォールストリートの大物、いわば“権 力者”たちを取材することがたびたびあった。“女の若手”だったからか、CEO への取材のアポを取るのにそんなに苦労をしなかった。

 

 まだリポーターとして働いていた頃、私は若くてやたら野心があり、少し生意気で、同時に未経験ゆえの“純粋さ”があった。ある日、私はひょんな巡り合わせでビッグチャンスをつかんだ。誰もが知る、当時世間を騒がせてい た“あの会社”の代表の取材に漕ぎ着けたのだ。「このニュースを一番先に報道できたら」と思っていたので、逃す手はない。この世のすべてのリポーター たちは“スクープ”を血眼で探している。自分たちがいち早くニュースを世間 に伝えるために、どの報道陣も必死なのだ。重役であればあるほど、取材には好ましい。情報源の“説得性”が増せば増すほどいい。代表の証言を取れるなら、もう「負けなし」だ。 

 

 その代表は、私にホテルでの会合を提案し、「リッツホテル」を指定した。 私はそれを承諾。ホテルのロビーか、もしくはラウンジで会うのだと思ったからだ。しかし実際ホテルについてみると、彼は「ルームナンバー」を教えて きた。「ホテルの部屋で会うなんて、おかしくないか」と疑ったが、下手に意見して「取材の話はなかったということで」などとなったら困る。どうしてもその取材を遂行したかった。かなり怪しいが、とりあえず信じてみることにした。「なんたって相手は大企業の代表なのだ」、と。若く、素朴で、現場知らずだった。 この後、「やっぱり自分の直感には従うべきだ」と学ぶことになる。部屋のドアを開けた彼は、白いふわふわのバスローブに身を包んでいた。そして、わざとらしくあの部分がはだけ、ちらりとアソコが覗いていた。 

 

 走って逃げ出すべきだったが、私は固まってしまい、ぐいっと引っ張られて 部屋に入ってしまった。そのままソファに座らせられた。彼の方を見まいと努め、バッグから取材ノートを取り出し、真剣な口調ですぐさま質問をはじめた。というのも、彼はもうグラスに酒を注ぎはじめていたからだ。彼は私にも酒をすすめてきたが断った。「取材のため、取材のため」と自分を落ち着かせ ようと、何度も自分に言い聞かせた。

 彼はくすりと笑い、時間内であれば私のすべての質問にたいして答えると言った。「もっとリラックスして」と。そして、アソコをバスローブからむき出し にして、私に近づいてくる。グラスの酒をすすりながらゆっくり歩き、私の真ん前で立ち止まった。私の顔の真ん前にアソコがある状態だ。

 私はキレた。「現実に自分の身に本当に起こっているんだ」、と思った。私は心の中で怒り狂っていたが、その怒りを押さえつけ、自分を落ち着けた。一 つ咳払いをして、立ち上がって彼を押しのける。「取材は以上です」と、言った。「それ」と、直立しているアソコを見ながら言ってやった。「全然そそらないですし」

 どうしてあの部屋を出るとき、あんなにも落ち着いて、毅然とした態度をと れたのかはわからない。「ちょっと待って!取材受けるから!」と彼は叫んだ。私は振り向かなかった。もうそれ以上、彼の顔もアソコも見たくなかったのだ。

 

私がこの「取材事件」から学んだ3つのことは、今でも私のキャリアと日常生活でも役立っている。 

 

1. ホテルでの会合はしない。ホテルになってしまう場合は、 ロビーか、バーやレストランにすべき。

2. どんな状況でも取り乱さない。落ち着いて、毅然とした態度でいること。

3. いつでも、自分の直感に従う。 

 

未熟さゆえの「判断」で痛い目をしたこの事件。アメリカのビジネスマンを相手には、「考えすぎかな」など、緩い思考でいては馬鹿を見るようだ。「一つの振る舞い」、「一つの判断」が、命取りとなるこの世界。道ばたで歩いているだけで詐欺にあう可能性のあるアメリカであるからには、ビジネス界でもとことん相手を疑ってかかるのが得策だろう。